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まさか自分の人生に、こんな日が訪れるなんて! まだ余韻のなかにいます。
大好きなワーグナーの聖地で、大好きなオペラを観る。
家族3人で「バイロイト音楽祭」に行ってきました。

この夏の家族旅行は、ドイツとオーストリア。
というより、バイロイト音楽祭に行ったついでに、旅をしてきました。
なので今年の旅日記は、この音楽祭の話を書くことから始まります。
☆興味のない方にはスルーしてね。
「テレビで観る、来年行く」という方は、演出のネタバレがあるのでご注意を。
 

ドイツ中東部に位置する、バイロイト。
この小さな街が、毎年7月から8月にかけて局地的に熱を帯びます。
ワーグナーのオペラを30日以上にわたって公演する、バイロイト音楽祭。
世界の一流演奏家たちによる、この特別なオペラを鑑賞するために、世界各国のワグネリアン(ワーグナーファン)がこの地に集まります。

会場となるバイロイト祝祭歌劇場は、1年にこのときしか使われません。
ワーグナー自らが設計したこの歌劇場は、オーケストラピットが舞台の下に配置され(歌がよく聞こえ、観客が舞台に集中するように)、会場内は当時のまま冷房がなく(音響を優先して導入しない)、椅子は木製で硬く、肘掛けもない(眠らないように)。
初心者お断りといわれる斬新な演出で知られ、もちろん字幕もなく、ブーイングや批評も容赦なし。

そしてなにより、世界一チケットが取りにくい!といわれています。以前は郵送のみの受付、しかも常連さん優先だったので、最初の1枚が取れるまで8年はかかったそう。いまはネット申込が可能になり取りやすくなったといいますが、争奪戦には違いありません。
どちらにしろ公式サイトでの販売は3月に終了しているので、ドイツの別のサイトから、がんばってチケットを取りました。「人生何があるか分からないから、行けるときに行かないと」、そう自分に言い聞かせて。

日替わりで上演される4作のうち、選んだのは『タンホイザー』。
2月に新国立劇場の公演を家族3人で観たばかりですが、やはりこれしかありません。
有名な序曲は、私にとっては中学生のころから人生の節目節目で自分を奮い立たせてきた曲。オーケストラの楽譜を本を読むようにめくって、脳内再生することも。家族にとっても身近な曲です。

いかんいかん、前置きが長すぎるのでこれぐらいにして。
 

とにかく来ちゃったわけです。うふふ。
 

主人とルコもいっしょです。
 

劇場のなかは、こんな感じ。豪華な彫刻もシャンデリアもなく、音響効果を優先。
 

ぎゅうぎゅうのムンムン。
客席には縦の通路がないので、左右のいちばん端から席に着きます。
椅子の前も狭いので、中央に近い席の人は早めに入るのがマナーだったり、同じ列の人が揃うまで、みんな椅子に座らず立って待ったり。
そういった「バイロイト流」のひとつひとつに、しびれます。
 

音楽祭では、毎年すべての演目が刷新されるのではなく、今年は『タンホイザー』のみ新制作の年。つまり大注目のタイトル。
指揮は、ワレリー・ゲルギエフ(大忙しのベテラン指揮者。この音楽祭の期間中も来日して札幌と東京で振っているし、他の音楽祭などにも出演)。
演出は、トビアス・クラッツァー(新進気鋭の若手演出家。2011年にも現代に置き換えた『タンホイザー』を演出)。
ふたりとも、今年がバイロイトデビュー!

 

それでそれで、どんな舞台だったかというと…。
よろしければ、こちらのプロモーション動画をどうぞ。
(ドイツ語のインタビューは飛ばしても。ループ再生です)

ええっ? と思う人もいるかもですが、こういう感じだったんです。
バイロイトでは現代への置き換えはもちろん、歌詞を無視した展開もOK。
タンホイザーはローマへ巡礼に行かず逮捕されるし、つけ睫毛のドラッグクイーン(役名も芸名もル・ガトー・ショコラ)と、小男(「ブリキの太鼓」のオスカル役)は、原作にはいないキャラ(演技はするけど歌わない)。

 

第2幕は、動画にも出てきたように、舞台の上にスクリーンが。
上では映像が、下ではオペラが、それぞれ進行。
情報量の多さも、いまどきな感じです。

 

幕間の休憩は、それぞれ1時間。

休憩のたびに全員会場から出して鍵をかけ(セキュリティが超厳しい)、歌劇場のなかにはロビーもないので、
 

併設されたレストランやカフェテリアで過ごすひとが多く、
 

ルコもアップルジュースをワイングラスで。
オペラ好きの中2女子。幸せなひとだ。
 

売店でいろいろ買いたいのに、グッズがいまひとつ冴えないところが、いかにもワーグナー。モーツァルトだったら素敵なのがいっぱいあるんだろうなー、なんて思いながら、マグネット、ワーグナーの横顔のクッキー型、扇子、ネックストラップなどを購入。
 

休憩の終わりが近づくと、バルコニーで演目に合わせたファンファーレが。
このファンファーレを聞きたくて、みんなバルコニーの下に集まります。
これも、バイロイト流。
 

2幕と3幕のあいだの休憩は、2幕の演出を受けて、バルコニーがこんなことに。

 

そして、すべてが終わりました。
 

16時に開演して、21時終演。
『タンホイザー』はワーグナーにしては短いほう。

 

で、感想です。専門的なことは分からないけれど、正直な感想はたくさんあって、家族ともよく話します。ぜんぶ書くと長くなるので少しだけ。

◎歌が素晴らしかった。さすがバイロイト。
○タンホイザー(ステファン・グールド)…官能と純潔、奔放と常識、サブカルと伝統。ふたつの価値観の狭間をもったりと彷徨う男、その説得力が抜群だった。
○エリザーベト(リセ・ダフィドセン)…ふくよかでドラマティックな歌声がまだ耳を離れない。憂いを帯びた表情もよかった。
○ヴェーヌス(エレーナ・ツィトコーヴァ)…演出上の小芝居を巧みにこなしながらも力強い歌声。ルコのお気に入り。直前での代役だったとは思えない。

◎演出は、ポップにして、シニカル。劇中にバイロイト音楽祭そのものが登場するなど、設定が斬新ではあるけれど、本来のざっくりとした展開より、動機や描写がいちいち分かりやすく(ときに、やりすぎ)、十分に楽しめた。ル・ガトー・ショコラとオスカルも好演。脇役のヴォルフラムが丁寧に描かれ、第3幕で彼が歌う名曲「夕星の歌」が際立った。
【追記】序盤のところ、バーガーキングの駐車場でガードマンを…の展開は納得がいかない。それが嫌で下界にという動機にはなるが、それならもう一度ヴェーヌスベルクに戻ろうと思わないはずだし、あれは変だよね、と主人と話しています。罪の「質」が違う。取り違えてる。テレビ放送後、このブログへのアクセスが急増しているので、一応追記しておきます☆

◎序曲は、私の好きなドレスデン版(パリ版でなく)。オケは、全体的に印象が薄いというか、悪くはないけどグッとくるところがなかったような。序曲の終盤と、3幕の巡礼の合唱の演奏は、少し軽快すぎたかな(好みの問題ネ)。初日、指揮者のゲルギエフは会場で大ブーイングを浴びたとか。来年は交代だそう。キビシイなあ。

 

でもけっきょく…。帰りの飛行機で話していたのですが、これは、壮大な遊び、なのかもしれない。感想や解釈なんて不粋だったり、それも込みで、遊びだったり。私たち家族だって、この5時間をネタに今でも話したり歌ったりして楽しんでいる。日本からはるばる行った甲斐のある、それはそれは面白い遊びでした。

もうひとつ、これは主人の感想ですが、若めのドイツ人カップルがけっこういて、タキシードを着た男性が、ドレス姿の女性をドヤ顔でエスコートしていた。こういう文化、日本にあるかな。いいなあ、と純粋に。
 

とりあえず、書きたいこと(の半分)は書きました。
読んでくださり、ありがとうございます。

巨匠にも大感謝。

バイロイト音楽祭は、ドイツに入って2日目でした。
旅のつづきは、明日からダラダラ、ほぼ毎日更新します。