2018-11-21

『さよ 十二歳の刺客』の傍観者になれない緊張感。さよは私。義経はここにいる。

親子でお世話になっている作家仲間、森川成美さんの新刊をご紹介します。

『さよ 十二歳の刺客』
森川成美 槇えびし・画 くもん出版

さっそくページをめくってみると…。

文治4年(1188)、奥州。流鏑馬に励む、さよ、12歳。藤原良任を兄としているが、じつのところは壇ノ浦の戦いから奇跡的に生き残った平家の姫。さよは一族を滅ぼした源義経に復讐するために、その命を生きている。
【さよ、勇ましくも哀しいのう…】←読者代表、私の声(以下同)

義経が頼朝に追われ、藤原泰衡の客人として平泉に滞在することに。さよは男装をしてその屋敷を訪ねる機会を得るが、そこで見初められ、義経の息子・千歳丸の遊び相手として屋敷で暮らすことになる。そのまま男のふりをして…。
【ええっ。義経と同じ屋敷で暮らすの??】

あとは読んでのお楽しみ☆

 

さよがまるでそこにいるかのような、リアルで小気味良い描写に身を委ねて読んでいくと、次第にさよと自分との距離が縮まり、そして、ついに、重なる。さよはもう、そこにはいない。さよは、自分。目の前には、義経。さて、どうする  
このすさまじい緊張感。巧い!

昨年度、日本児童文芸家協会の雑誌『児童文芸』に連載されていた作品が、早くも単行本化。しかし連載の原稿をまとめるまでには長い年月がかかったそう。中世の空気を再現するために、物語に登場する阿弥陀堂など同時代の建築物を訪れたり、壇ノ浦の戦いの舞台となった関門海峡を眺めたり、十二単を着てみたり…。あ、そういえば、森川さんが十二単を着ている写真、Facebookで見たことある! だからこそのリアル、リアルゆえの緊張感。

復讐心、揺らぎ、葛藤、決意。あ〜面白かった。
歴史物でありながら、現代の感覚をぴたりと捉えた装丁も見事です。
ぜひ手に取ってみてください。

 

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