2018-09-01

北欧バルト夫婦旅日記2「タリンという分厚い手のひらのうえで転がる」

§3日目 ヘルシンキ〜タリン1日目

バルト海をゆっくり進む船で、リトアニアの首都、雨のタリンに着きました。
旧市街に入り、ホテルに荷物だけ預け、急いでまた外へ。

ありました、「ブラックヘッドの会館」。ここがコンサート会場です。

中世の繁栄の名残でもあるこの建物。いまでは音響のいい「聖オレフのホール」を有し、入口の扉は撮影スポットとしても有名。綺麗よね。

合唱団の演奏会は素晴らしく、途中の浴衣への早着替えもばっちり。写真がないのが残念ですが、日本人形のような60人が、エストニアの歴史ある建物のなかで華やかに繰り広げるそのステージを、どうぞ想像してみてください。
誇らしくもあり、ありがたくもあり。すべてが貴重な経験でした。

演奏会を終えてホテルへ。タリンで泊まるのは、ここ。
ホテル「スリーシスターズ(三人姉妹)」。いい名前でしょう?

15世紀に建てられた3棟の商家で、正面の壁面が女性的なところからそう呼ばれているそう。いまは3棟をつなげてホテルに。
ちなみに、建物の上のほうに出っ張っている棒は、クレーン。当時はクレーンを使って屋根裏の倉庫に物品を引き上げていたそう。旧市街の建物にはたいがいクレーンがついていて、モノが溢れていた時代を彷彿させます。

エリザベス女王や天皇陛下も宿泊したことがある五つ星ホテルですが、私ども庶民はもちろん小さなお部屋を予約。ところが、ラッキーなことにスイートルームにアップグレードしてくれました!
真ん中の2階のお部屋です。

当時の面影を残した室内。

2泊目はフットライナーが赤になっててテンションさらにアップ。色の力ってすごい。

見づらいですが、猫脚のバスタブ。

このホテルには「雨の日になると感じのいい女性の幽霊が窓を閉めにくる」という言い伝えがあり、私はそこにも惹かれていました。
けれど主人はそういうのが怖い人。「幽霊でるなら、泊まれないじゃん」なんて言うので「雨の日しか、でないから」とごまかしていたのですが‥‥。

雨!

どうするのかな?と見ていたら、この窓の鍵がないことが気になり、フロントに聞きにいってしまいました。
それで「信じられないんだけど、鍵ないんだって」と言いながら戻ってきました。

「そうだねー、鍵がないと怖いよねー」←棒読み。‥‥頑張れ!

 

§4日目 タリン2日目

雰囲気たっぷりのレストランで朝食をすませ、

さあ、タリン観光。
まずは、聖オレフ教会へ。

赤目必至の暗くて狭い階段を上って上って上った先に、

この眺め。

まったくもって俯瞰映えする街で、別の場所からはこの眺め。

道を歩けば、こんな感じ。

一糸乱れぬテーマパーク感。
だけど不思議。ディズニーランドはいつまでたっても好きになれないのに、タリンの街は一瞬で大好きに。なんでだろ?

「可愛い」もいっぱい。

扉さえ可愛い。

ヘアサロンも可愛い。

行きたかった「職人の中庭」も、期待を裏切らない空間でした。

見て、この色の使いかた! 隣接する老舗のショコラティエ「Pierre Chocolaterie」のお店に入って注文します。

店内のムードも完璧。

トイレ(男女兼用)の扉も秀逸。

このひと皿にも、色の妙技を感じます。

夜は「Olde Hanza(オルデハンザ)」へ。
店内も料理も店員も、中世15世紀を再現したレストラン。

灯りは蝋燭だけ。
よく煮込んだお肉のスープを、闇鍋のようにいただく。

ふと、影のなかに見つけた光は格別であることに気づいたりする。

このレストランは雑貨店も併設しているというので、なにげなく入ってみると、思いがけない光景が。

み、満ち足りている‥‥。
なんだか知らないけど、ものすごく満ち足りた光景。
繁栄。そう、繁栄の図ここにあり。
なんなんだ、この再現力。中世の繁栄を腹の底から再現している。
これはちょっと衝撃でした。勉強にもなりました。

そうだ、「ふとっちょマルガレータ」にも行かないと。

1529年に建てられた、旧市街の出入り口にある砲塔。
直径24m、でもって壁の厚さが4.7m!

砲塔が不要になってから監獄として使われ、そのときの食事係のおばさんが太っていて、彼女の名がマルガレータだったことから命名されたとか。

次の日は朝早くにタリンを出なければならないので、この愛すべき街をもう少しだけ歩いてみます。たとえばこんな道。

旧市街地内のいちばん外側。右は城壁です。

外に出てみると、より凄さがわかります。

13世紀に造られたこの城壁は、高さ14~16m。長さは、当時で約2.5km、そのうち1.85kmがとてもいい状態で残っているそう。

繁栄する街を守るために造られた、強固な壁と46の塔。街の入り口には重厚な砲塔。

交易で栄えたこの街の人々の、太さを感じます。
堅さや賢さだけじゃない、『七人の侍』で描かれる「百姓の図太さ」のようなものも孕む「商人の太さ」。
それが、この街の徹底したテーマパーク感だったり、色や光の修練テクニックだったり、遺伝子レベルの再現力だったりの奥底にあるような。

だからでしょうか。この街で私たちは、つねに受け身でした。タリンという分厚い手のひらのうえで、体よく転がされている心地よさ。

「何泊もしたかったなあ」
そう何度も口にしていた主人。同感。

 

§5日目 タリン3日目

朝食も食べられないほど早くにホテルを出て、ラトビアに向かいます。

さようなら、三人姉妹。

また会いましょう、タリン。

 

つづく。

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