2018-10-08

『月あかり洋裁店』に登場する、月の光を織り込んだ布。その美しさの秘密。

仲良しの作家仲間、ひろいれいこさんのデビュー作をご紹介します。

『月あかり洋裁店』
ひろいれいこ作 よしざわけいこ絵 PHP研究所

さっそくページをめくってみると…。

裏通りに「月あかり洋裁店」をオープンさせた、あかりさん。すぐにお客さんが訪れますが、接客をしているうちに、みんなうつむいて帰ってしまいます。
【美しい名前のお店。でもなぜお客さんは帰るんだろう?】←読者代表・私の声

お客さんが来なくなってひと月、お店を閉めようかと考えるあかりさんの元へ、月うさぎが現れます。月の光を織り込んだ布を広げて「ハンカチを作ってください」。うさぎの依頼をあかりさんは引き受けます。
【ハンカチを手縫いするところ、なんて幻想的なシーン。】

ハンカチを縫っている途中、あかりさんはうさぎの表情を見て、お客さんが帰っていった理由に気づきます。
【ああ、なるほど…】

あとは読んでのお楽しみ☆

 

まあ、なんと美しい物語。
これが、ひろいさんの描きたかった世界なのね。ため息がこぼれます。

 

表紙の帯にあるように、「夢」がお話の軸となっています。
叶ったり、叶わなかったり、それでもやはり諦められなかったり。
夢への意志は自分からまっすぐと伸び、ときどき止まってしまっても、やはり前へと伸びていきます。

そしてもうひとつ、なぜお客さんが帰ったのか。
気づけば簡単なことでした。
気持ちの向きひとつで、物事が変わっていくことに、はっとします。

まっすぐ伸びる意志を縦糸に、日々向きを変える気持ちを横糸に、人は「夢」という布を織っているのかもしれません。
そう思わせるほどの緻密な構成力。そして、しなやかな文章力。

物語にも月の光を織り込んだ美しい布が登場しますが、作者のひろいさんは、その糸から紡ぐように、時間をかけて丁寧に、自分らしい方法で、このお話を書き上げたのがわかります。

よしざわけいこさんの絵も、物語にぴたりと合っていて素敵です。

 

第17回グリム童話賞優秀賞受賞作を元にした、渾身のデビュー作。
ひろい作品をもっと読みたくなると思います。
ぜひぜひ手にとってみてください。

ひろいさん、おめでとうございます!!!

 

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